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ようこそ!~うんちくコラム~


東海支部大野先生の長野式を織りまぜたうんちく集

「物語に基づく医療」 
 
(1)10年ほど前から潰瘍性大腸炎を発症している女性患者。
 
昨年の夏に症状がひどく悪化し入院し、一時は生命の危機まで危ぶまれる状態となったが医師はじめ病院スタッフの懸命な処置にてとりあえず症状は治まり、9月に入り退院できた。
とはいえ、完全によくなったわけではなく、毎朝の腹痛や下血は続いている。
 
退院後は1週間~10日くらいに1度のペースで来院していた。
脈状は「細・虚」 処置は扁桃処置、細脈処置を中心にその時々の所見に従い処置する。
次リョウの灸頭針は毎回行った。治療後は症状は改善する。
 
そして彼女は彼女自身、思う所があったらしく仕事を辞め、住まいを変えて生活の環境を変え、食事や生活スタイルを全て見直していった。
 
また治療時にいろいろと話をしている中で彼女は母親に対して子供の頃から複雑な感情を抱いていたことにも自分自身で気づき、それからはできるだけ母親と向き合うように心がけるようにし始めた。
 
そんな頃からどんどんと症状は快方に向かい始め、3~4ヶ月ごろには薬を飲まなくても何ともなくなってしまった。
もちろん病院の検査値も改善されていった。
 
医師には「またすぐぶり返してしまうだろうと思っていたが、どんな生活をしたらこんなに良くなってしまうのか?」と驚かれてしまったという。
 
退院してから1年たったが「おなかの調子は大丈夫!ただ風邪気味で咽喉がおかしい。」と来院した。
 
 
 
(2)来院する3日前に突然、記憶喪失になった中学3年の男子。
 
苗字は覚えているが名前を忘れ、学校の友達のことはさっぱり忘れてしまった。
 
脈状は「細・虚」 腹証は左天枢、大巨(+)、 肩井(+)
 
腹脈相反する所見である。
 
どうやら長期にわたって学校や進学のこと、家庭事情などいろいろなストレスがかかっていた様だ。
 
施術後は気分がよくなったと帰宅する。
 
3週間後に2回目
脈状「やや緊」 腹証は左天枢(+) 脈と腹が順である。身体はだいぶ回復したようだ。
お友達も数名思い出したそうだ。
 
扁桃、肝実、イヒコン等処置する。
 
帰宅後、一眠りした後、ふっと記憶が完全に戻った。
 
 
このようなストレスやトラウマ、日常の何気ない生活がその症状に密接に結びついているという事実は臨床上たびたび強く認識できるものであります。
 
単にその肉体的症状と肉体的所見のみを見ていても症状の本当の姿は見えてこないものと思います。
 
ナラティブ・ベースド・メディスン、すなわち「物語に基づく医療」。一人一人の生い立ちや生活史、社会的背景などの人生物語の中あらわれた病気、症状をその物語の流れの中で捉えその意味合いやメッセージを気づき、本当の姿を見出しながら癒してゆく。
 
外科医の土橋重隆氏は左の乳がん患者には共通したストレスが、右の乳がん患者にはまた別の共通したストレスが見出されると言っています。またそれぞれに共通した気質もあったそうです。大腸がんや卵巣がん、胃がん、肺がんなどにもそれぞれに共通したストレスや気質があったそうです。
 
鍼灸は気の医学だと思っています。その人その人の気にはいろいろと深い意味合いも含まれていると思います。
広く深い洞察をもって臨床に望んでいけるようでありたいと思っています。
 
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  027 東海支部 大野倫史 平成20年 9月


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